株式会社愛媛CATV様は、愛媛県を中心にケーブルテレビ、インターネット、電話サービスなどの情報基盤を提供し地域社会の生活を支える企業です。同社が力を入れるローカル5Gを利用した高速通信サービス「eねっとAir」を実現する通信端末として、+F FS050Wをご採用いただいた経緯や市場の反応、今後の展望についてお話を伺いました。
ローカル5G網による高速な通信と、地域BWAによる
安定かつ広範囲で利用可能な4G網をシームレスに切り替え
御社が展開するサービス「eねっとAir」ついておしえてください。
今や生活に不可欠である通信環境を地方エリアでも、便利で安定的に、しかも安く提供することは日本の全国地域ごとに積極的に実施していくべきと考えています。そして、愛媛県内でこれを実現するのが当社の使命ととらえ、これまで通信インフラを提供するMNOとして、地域BWAを利用した4Gサービスを展開し、既に有線エリアと同等のエリアカバレッジとなっています。さらに、より高速で快適な通信インフラの提供を目指し、2019年12月より受付開始となったローカル5G制度を活用し、地域の様々なニーズに応えるべく自前でローカル5Gの基地局を建設し、ローカル5G網の拡充も行ってきました。
当社ではこれらを組み合わせることで、ローカル5G網による高速な通信と、地域BWAによる安定かつ広範囲で利用可能な4G網をシームレスに切り替えて使用できるサービス「eねっとAir」を提供しています。このサービスは、2023年8月31日に施行された「共同利用」※制度で運用の柔軟性が一気に高まり、それ以降利用者数が急速に増え始めています。
※「共同利用」とは、ローカル5Gの一の基地局を複数の利用者が共同で利用する場合等に限り、一定の条件下で、免許の有効期間に限り、当該一の基地局及び当該複数の利用者の自己土地を含む最小限の区域を「共同利用区域」として設定し、共同利用区域内であれば他者土地であっても自己土地相当と扱うことができる利用形態です。

端末としての要件だけでなく、
メーカーとしての柔軟性も発揮していただくことができた
+F FS050W導入の背景や決め手を教えてください。
当社では、ローカル5G用途としては珍しい、端末を気軽に持ち出して移動しながら使うということを想定しています。そのため、使用する端末はローカル5Gにも対応している5G Sub6※及び地域BWAの周波数帯に対応していること、その両回線を切り替えられること、いつも携帯できるようコンパクトなこと、バッテリーを搭載していることなどの要件がありました。当時は当社の要件に合う端末はまだ市場になかったため、以前から付き合いのあった富士ソフトから+FFS050Wを発売する話をご案内いただき、ようやく要件に合致する端末に出会えました。
※ 「Sub6」とは、5G通信で使用される周波数帯の1つで、6GHz未満の周波数帯を指します。5G通信で使用される周波数帯のなかでは、電波が遠くまで届きやすく、障害物の影響も受けにくいという特徴があります。

テクニカル本部 技術部 担当課長 北村 廉 様
当社の「eねっとAir」では、別々のコアを使用するローカル5G網と地域BWAによる4G網を切り替えて使用するため、採用端末はこれら両方のSIMカードを保持できるデュアルSIM対応である必要がありました。また、実際にはどういったタイミングでネットワーク網の切り替えを行うのが最適か検証を行いながら、端末のファームウェアを調整してもらう必要もありました。富士ソフトの+FFS050Wは、こうした要望にも対応いただき、端末としての要件だけでなく、メーカーとしての柔軟性も発揮いただいたことで、当該サービスの対応端末として採用することができたと思っています。
約半年間で一気に2,000件を超え、
ローカル5Gの利用は急速に広がっています
持ち運びながら利用するローカル5Gについて、市場の反応についてお聞かせください。
「eねっとAir」は、個人向けのサービスですので、様々な人にご利用いただいていますが、面白い発見だったのは、タクシーの運転手の方に結構喜ばれているというケースです。用途としては、お客さんを乗せていない待機時間中にインターネットの動画視聴をするために利用しているようで、これが、地域内をタクシーであちこち移動しながらも待機地点がローカル5G網内であればしっかり5G高速通信ができるので嬉しいという、まさに移動しながらローカル5Gを活用できるという当社サービスの独自性にマッチしていました。実際、現在の利用用途ではローカル5G網と地域BWAの4G網を切り替える時に通信が途切れず連続して使用できるかどうかということはあまり重要にならず、利用しようとしたときにしっかり通信ができれば問題ないケースがほとんどの様です。
こうした利用の本格化は「共同利用」制度が施行されてからで、当初100件に満たなかった利用者数が約半年間で一気に2,000件を超え、ローカル5Gの利用は急速に広がっています。基地局整備も継続しており、さらなるカバーエリアの拡大は行っていきますが、ローカル5G技術の観点からもまだまだ4Gによるバックアップ接続は必要です。そういった意味でも、ローカル5Gという点を拡充・強化しつつ、地域BWAの4Gでもしっかり点の間を埋める面での対応ができている当社のサービスはうまく機能していると思います。


「eねっとAir」による個人向けサービスでの収益をベースに、
今後は法人向けのサービス展開へと注力
今後の展望についておしえてください。
当社が目指すローカル5Gの浸透という観点では、本来の目的である地域企業や自治体により良い社会実装のための通信インフラとして利用していただくことに変わりはありませんので、現在展開している「eねっとAir」による個人向けサービスでの収益をベースに、今後は法人向けのサービス展開へと注力していきたいと考えています。
ローカル5Gビジネスの発展・普及は、地域ごとのローカル5Gを活用した取り組みの深さを見ることが重要だと考えています。全国を網羅するパブリックな5Gサービスではないため、マクロな視点では対応エリアスケールが小さいビジネスと捉えられがちなのですが、ミクロな視点では非常に深さのあるビジネスが可能で、さらにそれを全国に横展開していける可能性があると見れば、結果的に大きなビジネスになると考えています。
富士ソフトには、そうしたミクロな視点での可能性にも共感していただいており、これまでも様々な相談に対して真摯に対応いただいているため、とても意見交換しやすい関係が築けています。今後もその関係性を基盤にローカル5Gビジネスの頼れるパートナーとして協業していけたらと考えています。